青色事業専従者給与と贈与税
こんにちは。税理士の星田です。
今回の記事は、青色事業専従者給与と贈与税についてのお話です。
青色事業専従者給与(所得税法57条)は、個人事業主の方にはおなじみの制度です。
この青色事業専従者給与と贈与税は、一見すると無関係に思えますが、これが接点をもつ場面があります。
まず、青色事業専従者給与についてのおさらいです。
そもそも、同一生計親族が事業から対価(給与など)を受け取る場合には、事業主の必要経費に算入せず、受け取った側の同一生計親族においても所得計算上ないものとみなされる、という原則があります(所得税法56条)。
これは要するに、個人事業主が同一生計の配偶者や子に給与を支払っても、それは個人事業主の経費になりませんよ、という原則を定めた規定です。
青色事業専従者給与はこの原則に対する例外として設けられたもので、青色申告者で一定の手続きを行ったものであれば、同一生計親族へ支払った給与を事業主の必要経費として認めましょう、という制度です。
さて、この青色事業専従者給与ですが、「いくら支払ってもよいのか」というと、当然ながらそんなことはありません。
仕事の内容に照らして相当と認められる金額を超えたときは、その超えた部分が贈与税の対象になるので注意が必要です。
それでは、「仕事の内容に照らして相当と認められる金額」とは一体どの程度なのか、ということが気になるところです。
この金額は、明確に定められているわけではありません。国税庁の法令解釈通達によれば、大雑把にまとめると以下の判断基準が設けられています。
①その年に現実に支給を受けた給与の金額が判定対象となる。
②その事業や地域における、同種同規模の事業に従事する者で、判定対象となる青色事業専従者と同じような仕事に従事しており、能力や職務従事の程度、経験年数やその他の要因が近いと認められるものが受け取る給与の金額を基準に判定する。
なんだかよくわかりませんね。しかも、②のデータを納税者が持っているとは思えませんので、難しいところです。
とはいえ、私自身は寡聞にして「青色事業専従者給与の支払額が不相当であるため贈与税を課せられた」という話は聞いたことがありません。納税者のみなさんは、さすがに何の根拠もない給与設定は行わないということでしょう。
税法は、課税の公平性といった観点から、「社会通念」といった一般常識的感覚をとても重視します。
青色事業専従者給与の設定においても、「他の人にこの仕事をお願いするとすれば、周りの給与支給状況をみてもこれぐらいの金額だな」といった一般常識的感覚を保持していれば、問題になることはないと思われます。
[sanko href=”https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/651008/01.htm” title=”「青色事業専従者が事業から給与の支給を受けた場合の贈与税の取扱いについて” site=”国税庁(法令解釈通達)”]
※以上の情報は、令和3年7月1日現在のものです。個別の事案に係る税務判断については、必ず顧問税理士や所轄税務署へご相談・ご確認ください。