従業員親睦会が関係する社員旅行費用の課税関係
給与等から親睦会費を控除し、ある程度蓄積された親睦会費に会社からの拠出金を加えて社員慰安旅行等の支出に充てる、といったことは珍しくないでしょう。
この取扱いについて整理してみます。
法人税の取扱い
法人税基本通達(14-1-14)によれば、一定の要件を満たす親睦会等の従業員団体については、その福利厚生事業等について、会社の収益・費用等として取り扱うこととされています。
一定の要件とは、以下のようなものです。
・団体が、法人の役員又は使用人をもって組織されている。
・団体が行う事業が、役員又は使用人の親ぼく、福利厚生に関する事業を主として行っている。
・団体の事業経費の相当部分をその法人が負担している。
・次の①~③いずれかの事実がある。
① 法人の役員又は使用人のうち一定の資格者が、その資格に基づき団体の役員に選出されるルールがある。
② 団体の運営等重要な事項の決定について、法人の許諾を要する等、法人が運営に参画している。
③ 団体の事業に必要な施設の全部又は大部分を、その法人が提供している。
一般的な親睦会等の従業員団体は、この要件を満たすことになるでしょう。
従って、親睦会等が支出した福利厚生費の性質をもつ支出は、会社の福利厚生費として取り扱うことが多いものと思われます。
また、給与から控除する等の従業員負担部分については、区分して計算することができるとされています(法人税基本通達14-1-15)。
法人税基本通達14-1-4
(福利厚生等を目的として組織された従業員団体の損益の帰属)
法人(法別表第一及び別表第二に掲げる法人を除く。)の役員又は使用人をもって組織した団体が、これらの者の親ぼく、福利厚生に関する事業を主として行っている場合において、その事業経費の相当部分を当該法人が負担しており、かつ、次に掲げる事実のいずれか一の事実があるときは、原則として、当該事業に係る収益、費用等については、その全額を当該法人の収益、費用等に係るものとして計算する。(昭46年直審(法)20「10」により改正)
(1) 法人の役員又は使用人で一定の資格を有する者が、その資格において当然に当該団体の役員に選出されることになっていること。
(2) 当該団体の事業計画又は事業の運営に関する重要案件の決定について、当該法人の許諾を要する等当該法人がその業務の運営に参画していること。
(3) 当該団体の事業に必要な施設の全部又は大部分を当該法人が提供していること。
法人税基本通達14-1-5
(従業員負担がある場合の従業員団体の損益帰属の特例)
14-1-4に該当する従業員団体について、その団体等の損益等が、例えば、当該法人から拠出された部分と構成員から収入した会費等の部分とであん分する等14-1-2の方法に準じて適正に区分経理されている場合には、14-1-4にかかわらずその区分されたところにより当該法人に帰属すべき収益、費用等の額を計算することができる。
消費税の取扱い
では、消費税はどのようなルールになっているでしょうか。
この点については消費税についても通達が設けられていて、一定の要件を満たす団体であれば法人の行為と同視するような取扱いになっています。
なお、課税仕入れについて従業員負担部分が区分されているものについては「資産の譲渡等」には該当しないとされています。
消費税基本通達1-2-4
(福利厚生等を目的として組織された従業員団体に係る資産の譲渡等)
事業者の役員又は使用人をもって組織した団体(以下1-2-5において「従業員団体」という。)が、これらの者の親睦、福利厚生に関する事業を主として行っている場合において、その事業経費の相当部分を当該事業者が負担しており、かつ、次に掲げる事実のいずれか一の事実があるときは、原則として、当該事業の全部を当該事業者が行ったものとする。
(1) 事業者の役員又は使用人で一定の資格を有する者が、その資格において当然に当該団体の役員に選出されることになっていること。
(2) 当該団体の事業計画又は事業の運営に関する重要案件の決定について、当該事業者の許諾を要する等当該事業者がその事業の運営に参画していること。
(3) 当該団体の事業に必要な施設の全部又は大部分を当該事業者が提供していること。
消費税基本通達1-2-5
(従業員負担がある場合の従業員団体の資産の譲渡等の帰属)
従業員団体について、例えば、その団体の課税仕入れ等が、当該事業者から拠出された部分と構成員から収入した会費等の部分とであん分する等の方法により適正に区分されている場合には、1-2-4にかかわらず、その団体が行った事業のうちその区分されたところにより当該構成員から収入した会費等の部分に対応する資産の譲渡等又は課税仕入れ等については、当該事業者が行ったものとすることはできないものとする。
従業員負担分と会社負担分が区分されていない場合には?
従業員団体からの支出については、従業員負担分と会社負担分を区分することが一般的でしょう。
しかしながら、もしこれを区分していない場合の取扱いはどうなるのか?
この点については、若干の疑問が残るところです。
<今日の会計英単語>
福利厚生費:welfare expense
※この記事は、2019年9月17日現在の法令等に拠っています。個別具体的な事案につきましては、顧問税理士等へご相談ください。