平成30年度・国税庁による再調査の請求の概要

国税庁より、「平成30年度における再調査の請求の概要」が公表されています。

リンク:https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/saichosa/index.htm

 

これによれば、平成30年度の「再調査の請求」発生件数は2,043件で、前年度比12.6%増加のようです。

なお、「再調査の請求」とは、国税に関する法律に基づき税務署長等が行った更正・決定等の課税処分や差押え等の滞納処分等に不服がある場合に、納税者がその処分等を行った税務署長等に対してその不服の申立てをする手続きのことです。

そして、この再調査の請求についての「認容割合」も公表されています。

分母が発生件数ではなく「処理件数(2,150件)」ですが、認容割合は12.3%でした。認容割合は前年度から変化がありません。

なお、「認容」件数には、納税者の主張が「全部」認容される件数と「一部」だけ認容される件数とが含まれています。

平成30年度でいえば、全部認容は27件(1.3%)、一部認容は237件(11.0%)。

全部認容のハードルが極めて高いことがわかります。

 

また、不服申し立ての制度には、国税不服審判所への「審査請求」もあります。

こちらも「審査請求の状況」として公開されています。

リンク:http://www.kfs.go.jp/introduction/demand.html

 

これによれば、平成30年度の発生件数は3,104件。前年度が2,953件ですので、若干増えているようです。

なお、国税不服審判所とは、国税庁の特別の機関であり、執行機関(国税局や税務署)とは別個の機関として設けられているもので、納税者が税務署長等の処分に不服がある際に、その審査を請求できます。

先ほどの再調査の請求を経てから国税不服審判所へ審査請求することができますし、再調査の請求を経ることなく直接的に国税不服審判所へ審査請求することもできます。

また、国税不服審判所の裁決に不服がある場合は、原処分について訴訟を提起することも可能です。

そして、気になる資産請求の認容割合ですが、平成30年度では7.4%という結果でした。これは、直近10年間で最も低い認容割合ですね。

全部認容は77件、一部認容は139件ですので、認容件数の中に占める全部認容の割合は、再調査の請求よりもかなり高いようです。

 

以上のような状況を鑑みると、課税庁に対する不服申立てが認容されることはハードルが高いといえそうです。

 

納税者側においては、日頃より税務コンプライアンスを意識し、税務調査の段階で調査官から指摘を受けた場合で、もし調査官の指摘が誤っているものであるときは、納税者が主張すべき点についてしっかりと論理的に調査官に対して伝えることが必要でしょう。

税務の公正を実現するための存在である税理士は、そのような場面で力を発揮できるものだということを、これからも伝えていきたいと考えています。

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