個人事業の資金繰り改善に必要なこと
個人事業主の方から、「利益は出ているはずなのに資金繰りが厳しい」というご相談をお受けすることがあります。
例えば、あるご相談事例では、確定申告書を拝見したところ申告書はきちんと作られており、事業所得もしっかりと出されている。
簡便的に事業から生まれるキャッシュフローを計算しても、それなりにキャッシュは生み出せている。
それでも資金繰りは厳しく、税金や国民兼保険料等の納付にも四苦八苦されているご様子でした。
資金の流れを確認すると、主に以下の気になる点がありました。
・金融債務(銀行借入金)の返済負担が重い
借入金の返済元金は、事業上の借入金に係るものであっても、損益計算には組み入れられません。
借入金が入金されたとき、収入には計上しませんよね。ですので、返済されたときには経費に計上しない、とお考えください。
そのため、事業で生み出された利益(正確には課税後の利益)から返済原資を生み出していく必要があります。
※ただし利息は別です。個人の確定申告であれば、事業上の借入金に係る支払利息は「利子割引料」の中に含まれています。
・生活費の総額が不明瞭である
そして、大きな問題は「生活費の総額を把握していない」という点です。
個人事業の収入と経費であれば、記帳をきちんと行っていれば、確定申告書(青色申告決算書)に表示されますので、把握することができます。
しかしながら、家計の場合は、家計簿を付けていなければその総額を把握することができません。
実態がわからなければ、改善ポイントを見つけることもできません。
シンプルな話ですが、ここに大きな問題があります。
個人事業のキャッシュフローは、家計と一体であることを忘れない
シンプルに表現すれば、
営業収入 - 必要経費(資金流出分) = 事業から生み出されるお金
事業から生み出されるお金 - 税金等の納付 - 借入金の返済 - 家計支出 = 個人としての余剰金
となります。貯蓄をすることも必要でしょうから、その金額も考慮に入れる必要があります。
この家計支出の部分については、家計簿アプリなどに頼りましょう。
最近は簡単に入力することができるアプリも多くあります。
「量入制出」、入るを量りて出るを制す、という言葉があります。
まずは1か月。面倒がらずに集計し実態を把握することが、個人事業主のキャッシュフロー改善の第一歩です。
※余談ですが、国の経済活動を扱う財政学の世界では、「量出制入」という概念が成立するとされます。ご興味ある方は、財政学の書籍を紐解いてみるとよいでしょう。
<今日の会計英単語>
「資金繰りが苦しい」:cash-strapped