時期が異なる納期の特例<源泉所得税と住民税の相違点>

7月10日は、源泉所得税の納期の特例に係る納付期限(上期分)です。

源泉所得税の納期の特例は、毎年1月~6月分の源泉所得税を7月に、毎年7月~12月分の源泉所得税を翌年1月にまとめて納付する制度で、利用されている方も多いのではないでしょうか。

 

一方で、個人住民税(特別徴収分)についても、納期の特例の制度があります。

こちらの納期は、毎年6月と12月です。源泉所得税の納期の特例と、1か月ズレているのですよね。

しかも、住民税のほうが納期が早く到来することから、納付をうっかり忘れてしまうことがあります。

納期限を過ぎてから住民税を納付すると延滞金が発生することがありますので、納付もれがないように気をつけたいところです。

念のため、制度の概要を簡単にご説明します。

 

源泉所得税の納期の特例

対象となる源泉徴収義務者:給与の支給人員が常時10人未満(法人・個人)

対象となる源泉所得税:給与・賞与、退職手当、税理士等の報酬・料金(※)
※その他の報酬等は納期の特例の対象になりませんので、原則通り毎月納付が必要になります。

納期:
1月~6月までに支払った所得から源泉徴収した所得税・復興特別所得税 その年の7月10日
7月~12月までに支払った所得から源泉徴収した所得税・復興特別所得税 翌年の1月20日

 

個人住民税(特別徴収分)の納期の特例(新宿区)

対象となる特別徴収義務者:給与の支給人員が常時10人未満(法人・個人) ←源泉所得税と同じ

対象となる住民税:住民税の特別徴収分

納期:
6月分~11月分 その年の12月10日 ←源泉所得税と1か月ズレる
12月分~翌年5月分 翌年の6月10日 ←源泉所得税と1か月ズレる

 

なぜ納期がズレるか?

それでは、なぜ納期がズレるのでしょうか。

源泉所得税も住民税も、半年ごとにまとめて、前半分・後半分をそれぞれ納付するという手続きであることには変わりません。

ただし、集計の範囲が異なります。

 

源泉所得税は、その年の1月~12月支払分が集計対象期間で、これを前半6か月(1月~6月)、後半6か月(7月~12月)に分けます。

原則的な納期は「対象となる給与・報酬等を支払った月の翌月10日」になりますので、半年ごとにまとめた場合は、その最後の月の翌月10日、すなわち7月10日と翌年1月10日が納期限になります。

 

一方で住民税の特別徴収分は、対象者の前年の所得に基づいて計算され、これが当年6月~翌年5月の12か月間にかけて給与から特別徴収(天引き)されます。特別徴収された住民税は、給与支払月の翌月10日までに特別徴収義務者が納付することが原則です。従って、納期限は7月10日~翌年6月10日ということになります。

ここで住民税の納期の特例の適用を受けた場合、やはり1年分を前半と後半に分けます。前半は当年6月~当年11月の6か月分です。そして、この分の納期はといえば、最終月である11月の翌月10日、すなわち12月10日ということになりますね。

後半部分も同様で、12月~翌年5月の6か月分をまとめて、最終月の翌月である6月10日に納付する、という形になります。

 

これで、源泉所得税と住民税の納期の特例における納付時期がズレる理由はおわかりでしょうか。

納期を揃えてくれればいいのですが、例えば住民税特別徴収分の最終月が5月ですので、これを7月10日納期限まで伸長すると、原則納付(毎月)の場合と不均衡が生ずるという理由で、現状では難しいのかもしれません。

 

納期の特例を受けるには手続きが必要

最後になりますが、源泉所得税も住民税も、納期の特例の適用を受けるには事前の手続きが必要ですので、注意してください。

手続きを踏まずに、勝手に納期の特例の適用を受けたものとして納付してはダメですよ。

 

国税庁:「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」(リンク)

新宿区:「給与からの特別徴収に関する手続き」(リンク)

 

 

※この記事は、2019年7月1日現在の法令に拠っています。個別具体的な事案につきましては、顧問専門家等にご相談ください。

 

今日の会計英単語:

「源泉所得税」: withholding tax

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