【平成29年度税制改正大綱】事業承継関係税制の見直し

平成29年度税制改正大綱では、事業承継に関する税制についても見直しが図られています。

今回は、その内容に簡単に触れるとともに、あくまでも私見ながら、その趣旨についても述べてみたいと思います。

 

 

1 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件の改正

改正前:1人に満たない端数は切上げ

改正後:1人に満たない端数は切捨て

 

これは納税者有利になる改正です。

例えば、相続開始時の常時使用従業員数が101名を考えると、以下の通りです。

改正前:切上げ81名(81名に満たなければ取消 =80名は取消)

改正後:切捨て80名(80名に満たなければ取消 =80名は取消にならない)

 

 

2 相続時精算課税贈与を贈与税の納税猶予制度の適用対象に

相続時精算課税贈与が、贈与税の納税猶予制度の適用対象に加わります。

納税猶予が取消になった場合の税(贈与税や利子税)が軽減されることになります(2,500万円の控除枠と20%の比例税率による影響)。

 

ちなみに、現行法では贈与税の納税猶予枠を超える部分(発行済株式総数の3分の2超部分)に相続時精算課税を適用することはできます。

今回は、納税猶予枠であっても相続時精算課税の規定を適用するというものです。

 

 

3 認定相続承継会社の要件を一部撤廃

認定相続承継会社について、中小企業者であること及び非上場株式等に該当することという要件が撤廃されます。

 認定相続承継会社(措置法70の7の4②一)とは、贈与税の納税猶予を受けた後に贈与者について相続が開始し、相続税の納税猶予へ移行した場合の、その規定の適用を受ける会社のことです。

現行法では、その定義は「認定贈与承継会社」としての要件(中小企業者・非上場株式等その他)にあてはまる会社で、これに加えて、相続開始時にも非上場株式等に該当し中小企業者であることとされています。

 これが、相続開始時において非上場株式等に該当せずともよくなり、中小企業者である必要もなくなるということですから、贈与時には中小・非上場であったものが、その後の成長により、大会社へステップアップ・IPOをしても納税猶予適用可能とされる(=適用範囲の拡大)ということではないでしょうか。

 

上記1~3の改正は、平成29年1月1日以後に相続もしくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税・贈与税について適用するとのことです。

 

 

4 類似業種の上場会社株価について選択範囲を拡大

 現在の財産評価基本通達では、類似業種比準価額方式における上場会社株価について、

①課税時期の属する月、②課税時期の属する月の前月、③課税時期の属する月の前々月、④前年平均株価

のいずれか最も低い株価を選択します。

 

これに

⑤課税時期の属する月以前2年間平均を加える

ということですので、最も低い株価という選択肢が増えることになります。

 

昨今の上場会社株価の上昇という状況がありつつも、中小企業の株価形成は必ずしもこのマーケットの流れとはリンクしていないということで、中小企業株価をより実態に近く評価し、「財産評価の適正化」を図るという趣旨ではないでしょうか。

 

 5 類似業種上場会社の比準要素について連結決算を反映させたものに改定

類似業種比準価額方式における類似業種上場会社の配当・利益・簿価純資産について、連結決算を反映させたものに改められます。

そもそも上場会社の株価形成は連結決算ベースでされていると考えられますので、その点を踏まえて類似も連結ベースにするものと思われます。

その意味では、これも「財産評価の適正化」に適ったものといえそうです。

 

 6 類似業種の比準要素をすべて1倍に

類似業種比準価額方式における各構成要素について、現在は利益が他の要素に対して3倍の影響がありますが、改正によってこれが他の要素と同じ(1倍)に均されます。

そもそも、この利益にバイアスがかかった評価方法は、平成12年改正によって設けられたもので、それ以前は個別の評価要素(配当・利益・純資産)ができる突出しないように配慮するという傾向にあったそうです。

利益に比重が置かれた理由については、「株価形成要因のうち最も大きいものは利益である」という考え方によったそうですが、利益の株価形成への影響は類似業種上場会社株価のなかで反映済みなので、理論的に不合理だという意見もあったようです。

 そして、現行の評価方法では、収益力の高い会社ほど株価が「顕著に」高くなり、収益力の低い株価はその逆になります。

これは、「中小企業に頑張るなと言っていることとイコール」という意見もあったほどですから、昨今の中小企業施策とは相容れない部分があったのかもしれません。

もちろん、過度な利益抑制による株価操作の影響を低減する、といった意図もあるでしょう。

 

 

7 評価会社の規模区分における金額等の基準を拡大

評価会社の規模区分における金額等の基準について、大会社・中会社の適用範囲が総じて拡大されます。

 類似業種による株価を下げる(適正化する)施策とセットで、類似業種の比率を上げることにより、株価を下げて事業承継を円滑化させたいという意図でしょうか。

なお、純資産価額との選択適用は現行のままです。

 

 

上記4~7の改正は、平成29年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用するとされています。 

 

 

8 株式保有特定会社の判定基準に新株予約権付社債を付加

 株式保有特定会社は、類似業種比準価額方式を採用することができません。

株式保有割合が50%以上になる会社がこれに該当します。

ここで判定の対象になる株式等とは、株式及び出資をいい、棚卸資産として所有しているものも含みます。

 

現行法では、新株予約権付社債はこの「株式等」に含まれていませんでした(会計上の勘定科目は投資有価証券a/cになりますが)。

 

ただ、新株予約権付社債は将来の株式への転換含みということで、改正ではこれを株式等に含め、株式保有特定会社の範囲を拡大し、「財産評価の適正化」を図る趣旨と思われます。

 

上記8の改正は、平成30年1月1日以後の相続等により取得した財産の評価に適用するとされています。 

 

 

 

事業承継税制については、細かい点の見直しが行われています。

「税制をより使いやすくする」「財産評価の適正化を図る」という2つの目的があるようですね。

経過措置等を含めた実務上の留意点については、立法化による整備を待ちましょう。

 

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