「相続税逃れの海外移住に網」とは?(相続税の納税義務者)

今日(平成28年10月21日)の日経電子版に、「相続税逃れの海外移住に網 政府・与党検討」というニュースが掲載されました。

 

これはどういうことでしょうか?

現行法令(平成28年1月1日現在の法令)において相続税を納める義務がある人、つまり相続税の納税義務者の取扱いをみてみます。

(贈与税もほぼ同様ですが、相続税にフォーカスして話を進めます。)

 

相続税の納税義務者は4種類

相続税法上、相続税の納税義務者は4種類。

①居住無制限納税義務者 ②非居住無制限納税義務者 ③制限納税義務者 ④特定納税義務者 の4つです。

つまり、これらのいずれにも該当しなければ相続税の納税義務はない、ということになります。

 

居住無制限納税義務者

相続又は遺贈により財産を取得した個人で、その財産を取得した時において日本国内に住所を有する者、とされます。

ある意味、最も一般的な形といえます。

 

非居住無制限納税義務者

次のいずれかに該当する場合です。日本国籍の有無によって分けられています。

 

① 相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有する個人で、その財産を取得した時において日本国内において住所を有していないこと。

 ただし、その財産を取得した個人または被相続人が、その相続開始前5年以内に国内に住所を有したことがある場合に限られます。

 (なお、「国外転出時課税制度による納税猶予の特例」を受けている場合はこの限りではありませんが、割愛します。)

 

② 相続又は遺贈により財産を取得した日本国籍を有しない個人で、その財産を取得した時において日本国内において住所を有していないこと。

 ただし、被相続人がその相続開始時に国内に住所を有している場合に限られます。

 

制限納税義務者

相続又は遺贈により日本国内にある財産を取得した個人で、その財産を取得した時において日本国内に住所を有していないもの、とされます。

ただし、非居住無制限納税義務者に該当する場合は除かれます。

これは日本国籍の有無は関係ないですね。

 

特定納税義務者

贈与により相続時精算課税の適用を受ける財産を取得した個人です。

ただし、居住無制限納税義務者・非居住無制限納税義務者・制限納税義務者に該当する場合は除かれます。

 

 

今日掲載されたニュースについては、このうち「非居住無制限納税義務者」の①に該当する場合について網をかけるものになります。

 

非居住無制限納税義務者①の要件である、「5年以内国内居住要件」を外した場合、つまり相続人・被相続人ともに相続開始前5年を超えて海外に居住した場合は、非居住無制限納税義務者に該当しないことになります。

 

ただ、それでも制限納税義務者に該当する場合がありますね。

「財産を取得した時において日本国内に住所を有していないもの」ですから、年数の要件はないためです。

ここで疑問に思われるのは、「制限納税義務者に該当したら、結局は納税義務を負うのでは?」という点でしょうか。

 

ところが、非居住無制限納税義務者と制限納税義務者では、課税される財産の範囲に違いがあります。

非居住無制限納税義務者は、相続財産の所在が国内でも海外でも、すべてが課税対象になります。

一方で制限納税義務者では、国内に所在する財産のみ(+相続時精算課税の適用を受けた財産)が課税の対象になる(=海外に所在する財産は課税の対象にならない)のです。

 

さらに、制限納税義務者は「日本国内にある財産」を取得した個人ということが要件ですから、そもそも日本国内に住所を有していない個人が「日本国内にある財産を取得しなかった」→「国外財産のみを取得した」場合には、(非居住無制限納税義務者に該当しなければ)この制限納税義務者にすらならないことになります。

 

 

相続税の納税義務者に係る規定は、改正を重ねるごとに厳しくなっています。

例えば、平成25年度税制改正が行われる前までは、日本国内に住所を有せず日本国籍も有しない個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、国内財産にのみ課税されていました。それが税制改正によって、先に掲げた非居住無制限納税義務者②のような形になったものです。

今回のニュースに取り上げられた改正の動きは、この非居住無制限納税義務者の要件をさらに厳しくする、近年の流れに乗ったものといえるでしょう。

 

以上が、相続税の納税義務者の概要です。

ただし、あくまでも概要になりますので、個別具体的な事情・事案については、税理士や税務署に確認してください。

 

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