正味の財産が基礎控除額未満でも、相続税が発生?

またまた相続の話題です。

 

相続税の基礎控除額が以前の6割に減額されたことは、既に皆さんもご存じのとおりです。

そして、この基礎控除額と正味の財産の関係について…
正味の財産が基礎控除額を下回る場合には相続税が必ず課税されない、とお考えの方が多いかもしれません。

ところが、必ずしもそうではなく、

遺産分割の方法によっては、
正味の財産<基礎控除額 であっても、相続税が発生する可能性がある

というのが今回のテーマです。

 

簡単な例を用いながら、見ていきたいと思います。
※例示の金額は適当ですので、細かいことは気にしないでください。

 

■正味の財産
まず、正味の財産を見てみましょう。以下のような感じです。

➤財産
賃貸アパート 土地・建物:150,000千円
自宅 土地・建物:35,000千円
金融資産:15,000千円
財産合計:200,000千円

➤債務
アパート建築借入金:▲170,000千円
預り敷金:▲2,000千円
その他の債務:▲1,000千円
債務合計:▲173,000千円 

 

この場合、正味の財産は27,000千円ということになります。

もし相続人が子供A・子供Bの2名の場合、
基礎控除額は30,000千円+6,000千円×2=42,000千円ですから、
正味の財産は基礎控除額未満ということになります。

 

■遺産分割例
先ほどの財産及び債務を、子供A・Bのそれぞれが以下のように承継したとします。

➤子供A
賃貸アパート:150,000千円
金融資産:3,000千円

アパート建築借入金:▲170,000千円
預り敷金:▲2,000千円

➤子供B
自宅土地・建物:35,000千円
金融資産:12,000千円

その他の債務:▲1,000千円

 

■純資産価額がクセモノ
先ほどの分割例で、子供Aと子供Bそれぞれの正味の財産を単純計算で見てみます。

➤子供A
150,000千円+3,000千円-170,000千円-2,000千円=▲19,000千円

➤子供B
35,000千円+12,000千円-1,000千円=46,000千円

 

子供Aと子供B、2人の正味の財産を合計すると、
先ほどの分割前で見た正味の財産と同じ27,000千円になりそうです。

 

ところで、相続税の計算では、
この正味の財産のようなものを「純資産価額」といって、計算の基礎にします。

各相続人ごとに純資産価額を算出して、
これに生前贈与の分を加算して、各相続人の課税価格を算出します。

そして、この各相続人の課税価格を合計したところから基礎控除額を差し引く…という計算構造になっています。

 

で、ここでややこしいのが、相続税の計算上は、「純資産価額がマイナスの場合は、ゼロとする」とされていることです。

 

■課税価格の合計額はどうなるか
先ほどの分割例で純資産価額を見ると、次のようになります。

➤子供A
150,000千円+3,000千円-170,000千円-2,000千円=▲19,000千円→マイナスなので0円

➤子供B
35,000千円+12,000千円-1,000千円=46,000千円

 

純資産価額は子供Aが0円、子供Bが46,000千円になります。

生前贈与加算額は無いものとすると、これが課税価格になりますから、合計すると46,000千円

基礎控除はいくらでしたでしょうか…そう、42,000千円です。

課税価格46,000千円>基礎控除額42,000千円ですから、相続税額が発生します。

 

■遺産分割は慎重に
遺産分割の内容によって、正味の財産額が基礎控除額未満であっても、相続税が発生する可能性があることがわかりました。

今回は極端な例でしたが、遺産分割は相続税額に大きく影響しますので、専門家の意見を聞きながら慎重に行う必要があります。

 

ただ、相続税を抑えるための分割をすることが、必ずしも円満な遺産分割というわけでもありません。

被相続人の遺志や相続人の生活、事業がある場合は事業の承継、その他多くの事情を勘案して全体最適を図ることが、円満な遺産分割を行うために必要なのかもしれません。

また、現に相続が発生していないとしても、
将来の円満な相続のために、財産を承継させる立場の方が予め遺言書を準備しておくことも有益なのかもしれませんね。

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