ベビーシッター費用も対象に・特定支出控除の概要

ベビーシッターを利用する会社員の税負担を軽くするために、ベビーシッター費用を所得控除に加えることを厚生労働省が検討しているとの記事が、平成27年8月25日付の新聞に掲載されました(日経新聞)。

 

この所得控除ですが、会社員などの給与所得者に認められる「特定支出控除」を指しています。
この制度はやや複雑なので、ご存じない方がいるかもしれません。そこで、簡単にご紹介します。

 

特定支出控除を理解するためには、その前に「給与所得控除」の制度を知ることが必要です。
給与所得控除は、いわば給与所得者のための概算経費控除という性格をもつものです。

一般的には 給与収入-給与所得控除=給与所得 として計算されます。

 

この給与所得控除は、給与の収入額に応じて、以下のような金額と定められています。

給与等の収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%(65万円に満たない場合には65万円)
180万円超 360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超 1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 1,500万円以下 収入金額×5%+170万円
1,500万円超 245万円(上限)

例えば、給与収入が500万円の人の場合は、給与所得控除額は 500万円×20%+54万円=154万円になります。従って、給与収入から給与所得控除額を差し引いた給与所得は、346万円ということになります。

 

さて、特定支出控除です。
これは、その名の通り「特定支出」の合計額が一定額を超える場合に追加の控除を認める制度です。


特定支出控除がある場合の給与所得の計算式は、 
給与収入-給与所得控除-特定支出控除=給与所得 となります。

 

まず、特定支出とは何かを知る必要があります。それは、次のような支出に限定されています。

通勤費 通勤のために必要な交通機関の利用等のための支出
転居費 転任に伴う転居のための支出
研修費 職務の遂行に直接必要な知識等を習得するための研修に要する支出
資格取得費 資格を取得するための支出で、その者の職務に直接必要であるもの
帰宅旅費 転任に伴い生計を一にする配偶者との別居を常況とすることとなった場合等において、勤務する場所と配偶者が居住する場所等との間の旅行に要する支出
勤務必要経費
(図書費・衣服費・交際費等)
※上限65万円
・職務に関連する図書を購入するための支出
・勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための支出
・得意先、仕入先などの職務上関係ある者に対する接待等のための支出

このうち、例えば通勤費が所得税非課税として会社から支給されている場合には、ご自身が通勤費を支払っても特定支出には該当しません(受け取る通勤費が非課税なのに支払う通勤費に費用性を認めるのは、不合理であるためです)。

 

そして、特定支出控除額は、

その年分の特定支出合計額-その年分の給与所得控除額×1/2(上限125万円)

として計算されることになります。

 

例えば、先の給与収入500万円の例では、給与所得控除額が154万円ですから、
特定支出の合計額が 154万円×1/2=77万円 を超えれば、その超えた部分について追加の控除が可能になるというわけです。

ただし、勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費等)については、65万円までの支出しか認められません。

 

そして、この特定支出控除を適用するためには、会社に証明書を発行してもらわなければいけません。
この会社の証明書に、特定支出に関する明細書や領収書等の必要書類を添えて、確定申告をすることが必要です。

 

それでは、この特定支出控除によって、どの程度の税額軽減効果があるのでしょうか。

まず、給与収入500万円、所得控除は基礎控除のみ(扶養親族などがいない)の場合の所得税(※)は、次のように計算されます。

※復興特別所得税の計算は省略します。

給与収入 500万円
給与所得控除 ▲154万円
基礎控除 ▲38万円
課税所得 308万円
所得税  21.05万円(308万円×10%-9.75万円)

 

先の条件に、さらに特定支出100万円があったとします。

給与収入 500万円
給与所得控除 ▲154万円
特定支出控除 ▲23万円(100万円-154万円×1/2)
基礎控除 ▲38万円
課税所得 285万円
所得税 18.75万円(285万円×10%-9.75万円)

 

両者の税額差異は、2.3万円になります。
所得税率は所得額に応じて税額が増減する超過累進税率なので、所得が大きければ(=税率が高ければ)両者の税額の差異は大きくなるでしょう。

 

それにしても、給与収入500万円の人が100万円の特定支出をすることは、やや無理があります。
設例では、タックスメリットも2.3万円に限られます。特定支出控除の適用にはハードルが高いといわれる所以です。

 

国税庁の統計によれば、平成25年分の給与所得者(主たる給与)の数は約236万人で、この年の特定支出控除の適用者数は約1,600人だったそうです。特定支出の中で最も多かったのは、資格取得費だったとのことです。

ちなみにその前年の適用者数は6人だったそうで(一桁・・・)、まあ大きく増加しているとはいえるのですが、まだまだ使い勝手が悪い制度といえそうです。

 

もしベビーシッター費用が特定支出の対象に追加された場合に、どの程度利用者が増えるのかが気になるところです。

 

※この記事は平成27年8月25日現在の法令に基づき作成しています。

 

 

 

 

 

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